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特殊犯罪捜査追跡班

気になる人

黒いショートカットで、決して目立つことがなく、いつも静かで穏やかな雰囲気の女性がいた。
小柄なその女性の話し方と声が好きで、気付けば俺はその人のことばかり考えるようになっていた。
意外に思ったのは、その女性の趣味がバイクだったことだ。

今まで、バイク好きな女性をたくさん見てきたが、それまで会った人と全く雰囲気が異なり、それもまた俺が彼女に惹かれた理由の一つでもあった。
バイクが好きな女性は、意外かもしれないが控えめでおだやかな人が多いように思う。
決して、オラオラ系ではなく、どちらかと言えば、自分の世界を持った一匹オオカミ系が多いような気がする。
そこは、彼女も同じ名気がする。

男女問わず同じかもな。

バイクが好きなのは俺も同じだ。
いつか、バイクの話をしてみたい。
そんなことをぼんやりと考えていたりもした。

穏やかな人

実は、彼女を何度か食事に誘ったことがあった。
そうそう、彼女の魅力の一つとして、話しかけやすいこともあった。
すぐに怒る女性もたくさんいるが、彼女はそういうタイプではないことがわかる。

事実、すべて断られてきたが、激怒されることはなく、やんわりと断られるだけだった。
どうしてバイクが好きなの?
俺が彼女に聞いてみたかったことは一つだけ。
でも、その答えを貰える場面はこれからも来ないことが分かった。

手が届かない人

彼女が特別な世界で生きていることを知ったのは、しばらく経ってからだった。
彼女はただのバイク好きではなく、仕事の一部にバイクが存在していたのだ。
だから、あまり人との距離を縮めようとしていなかったのか……

決して俺が彼女から嫌われていたのではなかったことが分かったほっとしたが、寂しくも感じられた。
まるで、二次元に君臨するキャラクターと、絶対に出会うことができないと知ったときのような感覚だ。
今まで、アニメオタクの話を聞いて笑っていたりもしたが、今なら彼らの気持ちがよくわかる。
自分を恥じた。

彼女の正体を知ってから間もなく、彼女と会う機会もぱたりと無くなった。
俺は、彼女の正体を思いがけず知ってしまったのだが、たぶん彼女のほうが俺がそれを知っていることに気づいてはいないだろう。
いや、優秀な人である。
もしかしたらとっくに気が付いて、俺の前から消えてしまったのかもしれない。

どうしてバイクが好きになったの?……なんて、野暮な質問をしなくて良かった。

記憶から消す

たぶん、俺は、俺が考えているよりも、彼女のことが好きだったんだろう。
バイクの話をしたいというのは口実で、何でもいいから彼女と思いっきり話をしてみたかっただけなのだ。

あのおだやかなまなざしと、落ち着いた柔らかい声を恋しく思うこともあるが、そろそろ俺の記憶の中から彼女の記憶を消そうと思う。
ただ、安全で幸せでいて欲しい。
そう思いながら、全部の記憶をアンインストールした。

*謎の美女の話を書いてみました。