嘘
いつもたくさん人に囲まれ女を見ると、社交的で楽しくて、誰からも好かれる人なんだろうなと思うものだ。
事実、そういう集団は、だいたい楽しそうに見えるし、ワイワイとしていて元気そうに見える。
でも、そんなに簡単に信じない方が良い。
なぜなら、その笑顔の背景には必ずしも楽しさがあるわけではないからだ。
俺が、こんな風に思うようになったのは、俺が高校生時代、とある女の集団の恐ろしさを目にしたことがきっかけだ。
クラスにいたワイワイ元気な集団とは全く縁がなさそうな女の子がいた。
誰かも嫌われていて、良いうわさなど一つも聞いたことが無かったが、それは、あのワイワイ集団の嘘といじめによるものだったのだ。
学生時代の思い出なんでクソしかないが、なかでもあの記憶だけは忘れられない。
それが、今でも俺が見未婚である理由でもある。
俺が信じているのは金とスーパーカブ。
寂しい人生?
大きなお世話だ!
ウワサ
元々人付き合いは得意ではない。
何といっても俺の親友はこのスーパーカブだから、あえて誰かと親密になろうと思ってはいない。
そんな俺の元に、近所の良くない噂が入ってきた。
何でも、とある若いお母さんが迷惑行為を繰り返しており、キレやすく厄介なのだそうだ。
しかし、俺も何度か話したことがある人だったが、ちょっと変わった雰囲気は確かにあるが、おかしな人だとは思わなかった。
挨拶だってしてくれるし、彼女の小学生の子供もしっかりした頭の良い子だと聞く。
先日、たまたまスーパーカブで彼女の家の近くを走ったが、お子さんの友達なのか、男の子が家の周りを走り回っていて、その噂に疑問を持ったのだ。
本当に怖い人ならば、そもそも遊びに行ったりしないだろう。
この子は、今まで何度も見ている。
直観
挨拶をしたことがある程度で、なれなれしく話しかけるのもおかしい。
俺は、対して知りもしない人に興味を持つタイプではないが、なぜかこの女性だけは気になる。
誤解しないでほしいが、好みだとはそういう話ではないぞ。
なんていうか、あえて言うなら違和感があったのだ。
直観かもしれない。
いつものように俺が愛するスーパーカブで帰宅した。
ただ、一つだけ違ったのは、帰りがいつもより遅くなったことだ。
だいぶ暗くなっていたが、彼女の家の前を通ると、まだ遊びに来ている男の子が外で遊んでいる。
余計なことだと思いつつも、俺はバイクを止めて早く帰るように伝えた。
「ここ、僕のお家だよ?」
「え?」
真実
「もう暗いよ、どうして中に入らないの?」
またしても余計なことを口にした。
「だって、いっつも僕にね、お友達が意地悪するから嫌なんだもん!」
「意地悪する子は、友達じゃないよ?」
男の子は、モジモジしながら言った。
「僕のこと叩いたりするから、こないでってママに言ってもらったんだけど、ママも意地悪されちゃった」
そういうことか。
都合よく使われているんだな。
「ママも泣いていたんだ」
余計なことを言って、複雑にするのもよろしくない。
「そうか、早く帰ってくれたらいいな」
そう言うのが精いっぱいだった。
見えるものが全てではない。
聞こえるものが正しいとは限らない。
今日は、カブも泣いているようだ。
*教訓を小説にしてみました。